チェコからの暮らしのNEWS〈後編〉

LIFESTYLE

チェコからの暮らしのNEWS〈後編〉

AUG.21.2019

モードデザイナー、テキスタイルデザイナーとしてご活躍中のズザナ・オサコさん。前編では、フォークロアをインテリアのアクセントにした、素敵なご自宅について、またご自身のオートクチュールサロンについて伺いました。後編では、日本での滞在経験から思うこと、チェコで流行しているインテリアのこと、今後のお仕事のご予定についてお話ししていただきました。

伝統が身近な日本

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—日本にお住まいだった時期もありますね。日本とチェコのライフスタイルの違いはどんな点ですか?
「いくつかあるのですが、特に私が刺激を受けたのは、日本では伝統が生活の一部であるということです。伝統と結びついた生活は、自然(四季)とともに、宗教さえも身近に感じさせます。そうした生活を維持するなかで、人々の互いの距離が近くなり、つながり、ひいては社会全体を強く結びつけているのだと思いました。これは現在のチェコが失ってきているものであり、取り戻すべきものだと強く感じます」
日本では、四季折々だけでなく、人生の節目ごとに行事があり、神の存在やそれぞれのコミュニティでの知恵を共存させた生活が当然のように受け継がれてきています。ズザナさんは、チェコの中でも特に伝統文化が根付くモラヴィア地方で生まれ育ったこともあり、日本での生活を通して、伝統について改めて考えさせられたのでしょう。

インテリアはナチュラル指向へ

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—チェコ経済は長く好景気にあり、豊かな暮らしができる富裕層が多くなりました。大都市では大規模な宅地開発がブームで、若い世代の住宅購入も珍しくありません。インテリアへの関心は高まり、国内外のインテリアメーカーやショップが増加しました。特に、比較的早い段階で参入してきた北欧の大型インテリアメーカーの影響もあり、一般的には北欧風のデザインやインテリアを支持する傾向があります。そんななか、最近のインテリアの流行の点でズザナさんがお気づきの点はどんなところでしょうか。
「現在はナチュラルでありながらシック、が流行だと思います。例えばこれまで、ソファや椅子の張り生地はコットンとポリエステルの混合素材、高級なものは革製が多かったのですが、最近ではリネンを使ったものをよく見かけますね。リネンの利用は全般的に増えていると思います。リネンは優秀な素材です。肌ざわりがいいですし、織り目も美しい、洗濯にも強く丈夫です。チェコでも昔から生産され、衣類や生活用品に広く用いられてきました。そして、Tradiceのラインナップにあるホームテキスタイルにもよく利用しています。色ではここ数年、ニュートラルで大人っぽさが出るグレーが流行です。インテリアでの使い方はグレーと白のコンビネーションですっきりとまとめる、あるいはグレーのグラデーションを使いシックに仕上げる傾向にあります」

モダンフォークロアの挑戦

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—今後についてはどのようなご計画をお考えですか?
「Tradiceは日本のお客様向けに製品を提供していく考えで、それに向けて具体的に動き始めています。さらに、イタリアやフランスも展開先として視野に入れています」
伝統工芸を愛し、積極的に生活に取り入れているズザナさん。お仕事では民族衣装にフォーカスしていらっしゃいますが、チェコには他にも陶器、籐細工、木のおもちゃ、藍染め、ボビンレースなどさまざまな伝統工芸が存在します。このような民俗文化を愛しむことは、この地で暮らしてきた人々の生活に思いを馳せ、現代に生かし、将来をより豊かにすること…。そんなメッセージがご自宅のインテリアや仕事への姿勢から伝わってきました。「この思いを伝えたい」と、ズザナさんの新しい挑戦がスタートします。

(取材/石川綾 撮影/横山佳美)

ズザナ・オサコさん(Zuzana Osako)
フォークロアニュアンスの衣類を中心とする、テキスタイル製品のデザイナー。モラヴィア出身。美術工芸高校で美術を学ぶ。チェコの民俗工芸にある美は不変であると考え、現代のライフスタイルとの融合を目指している。

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