イギリスのマルチアーティスト、キャロリン・クォーターメインが、15ヵ月もの時間を要して再クリエイトした「The Glade」。森の木々や植物が静かに呼吸し生息する生命感を秘め、崇高な美をも感じさせるその場所は、どのようにして生まれ変わったのか。今回は、アーティストたちの幸せなコラボレーションと、新しいThe Gladeに込めたキャロリンの想いをうかがいました。

Photograph by Simon Brown

今回のリニューアルに際しキャロリンのディレクションのもと、彼女をアシストした重要な2人のアーティスト。それは、ベルギー人の画家で古くからの友人でもあるディディエ・マヒューと、気鋭の作家、アレクザンドラ・カハヨグラウです。

「力強く枝を広げる木々と青々とした緑、森そのものをイメージさせる壁のアートは、ディディエが祖母から送られた一枚のポストカードにアイデアをもらいました。すべての壁を抽象的なマークでペイントし、それから少しずつ何層ものペイントとデコパージュを重ねることで、見る人がゆっくりとファンタジーの世界に惹き込まれていく。この壁そのものが、ペイントとペーパーによるコンテンポラリーアートなのです。

The Glade (湿地)という名にふさわしく床をもっとリアルな森林空間として演出したくなり、アーティスト、アレクザンドラ・カハヨグラウの唯一無二の創作カーペットを。まるで無数の苔が集積したかのような起伏に満ちた幻想的な淡いナチュラルカラーのカーペットをおしげもなく全面に敷き詰めて、The Gladeは、あふれる幻想的な生命感を湛えた自然の森に生まれ変わりました」

リニューアル前の「The Glade」

リニューアル後の「The Glade」
Photograph by Simon Brown

キャロリンが自身で2012年にクリエイトしたグリーンを基調としたオリジナル内装をベースに、新しく生まれ変わった森。そこにおさめる家具は、ラタン製のナチュラルなものから、さらに深いグリーンと紺碧のカラースキームでエキゾチックなロココスタイルへ。すべてがキャロリン・クォーターメインによってデザインされ、彼女のスペシャルチームの職人によるハンドメイドでつくられました。「私のお気に入りのルイ16世スタイルの椅子は、私自身が、ひとつひとつペイントを施し、写真をデジタルプリントしたファブリックを貼り込んだ私のオリジナル。森の深いグリーンとコバルトブルーに、高貴なバイオレットの優美なコントラストを加えました。さらに、彩色した鏡をテーブルトップにしたクラシックなパリのビストロテーブルを製作し、ステンドグラスの天井から溢れ落ちる光を受けて輝く、森に点在する水溜まりの美しさを表現しました」。

The Gladeは、壁も、床も、家具も、光さえも、すべてが計算しつくされた、キャロリン・クォーターメインのアート作品。ルイス・キャロルの鏡の世界が、アマゾンの幻想と出会う夢の楽園なのです。

「籘家具のある庭園の部屋のようだったスペースは、今は親密でミステリアスな、不思議の国のアリスの世界になりました。でもとっても大人のアリスね。」

森林空間を演出するデコパージュとアレクザンドラ・カハヨグラウの創作カーペット
Photograph by Simon Brown

The Gladeでは、早朝から深夜まで、思い思いの時間を過ごすことができます。サーブされるのは独創的なドリンクやカクテル、そしてピエールが監修する軽めのフード。キャロリンのお気に入りはフルーツ入りのカクテルとフランスのブルゴーニュワイン、プイィ・フュメ。ロンドンに旅行の際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。時にはこういったアートな空間に身を置くことで、日々を美しく幸せに過ごす暮らしのヒントが得られるかもしれません。

Photograph by Simon Brown