MITSUI HOME 理想の家、理想の暮らし01<br>家族で話しながら進める理想の家づくり

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MITSUI HOME 理想の家、理想の暮らし01
家族で話しながら進める理想の家づくり

APR.19.2024

創業以来、オーダーメイドの住まいづくりを真摯に考えてきた住宅メーカーの三井ホーム。
2024年に創立50周年を迎えることを機に、国内外で活躍するさまざまな分野のクリエイターとともに「理想的な住まいと暮らし」を考える連載企画がスタート。豊かな日常のために、私たちは何を手掛かりとするのか。初回は建築家の永山祐子に話を聞いた。

Photos MUGA MIYAHARA(portrait)  Text SHIYO YAMASHITA

建築家・永山祐子
フレキシブルに変えることで家はもっと長く住み続けられる

永山祐子建築設計のオフィスにて。多忙を極める毎日を送る永山は、「自然が豊かな土地に別荘を建てられたら、ソファでくつろぐ時間を大切にしたい。東京の家ではソファに座る時間すらなかなかなくて」と笑う。

Yuko Nagayama
永山祐子
東京都生まれ。昭和女子大学生活美学科卒業後、青木淳建築計画事務所勤務を経て、2002年永山祐子建築設計設立。
2020年のドバイ万博で日本館の設計を担当し高い評価を得る。

家族が一緒に過ごして心地いい場所をつくり出す

「もともと住宅の設計は大好き。青木淳建築計画事務所で最初に担当させてもらったのも小さな住宅でした」と話す永山祐子。最近では「東急歌舞伎町タワー」をはじめとした商業施設や、「ドバイ国際博覧会日本館」などの大型プロジェクトでの活躍が記憶に新しいが、実はその原点は住宅にある。

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「住宅もコンスタントに手がけていて、2022年には3軒竣工しています。住宅の面白さは『この方が住むからこの形になったのだな』と納得できるところ。私たちに設計を依頼してくださるということは、唯一無二のオーダーメードを希望されているということですから、クライアントの人となりが表現された家を念頭に置いて設計しています」


金沢文庫のいえ
家族が肩を並べる長机が主役に

永山の自邸「杉並のいえ」の長さ10mの長机を見て感動したオーナーが切望したことから、約9mの長机を造作した、子育て世代のための家。庭を眺めながら勉強したり、本を読んだり、仕事もできる、気持ちのいい空間が生まれた。

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Photo Nobutada Omote

自宅の中心はキッチン。銭湯の番台のような場所ですね(笑)

永山祐子

永山が自邸「杉並のいえ」を設計したのは 2018年のこと。8階建てマンションの最上階とその下階のメゾネットを、小学生の子ども2人を含む家族が暮らしやすいよう、全面的に改築した。
「自宅はフレキシブルにつくるということを特に意識しました。子ども部屋はここ、などと考えながら設計しましたが、今はまだ家族で川の字になって寝ています。面白いことに、子どもたちは下の階の仕事場を自分たちが使える空間にしてほしいと考えているみたいです。実際に今後どうするかはわかりませんが、家族のその時々の希望を聞いて、みんなで話し合いながらプランを考えるのもいいかなと思っています」

杉並のいえ
大きな空間が心地よくつながる

集合住宅をリノベーションした永山の自邸。構造壁ではない仕切りを解体し、南側と西側の大きな窓を生かしてワンルームに。主要な柱を基準にキッチンや寝室をレイアウトした。室内とテラスが連続し、周辺環境との一体感を得られる。

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Photos Nobutada Omote

「杉並のいえ」で強い存在感を放っているのが長さ10mにも及ぶ長机。
「子どもたちには個室ではなくパブリックなエリアで勉強してほしいと考えてつくりました。別々のことをしていても、なんとなく家族が同じ空間にいるというのがいいなと思って。子どもが中学生くらいになると、家族がそろって過ごす時間はすごく短くなる。だからこそ、みんなが一緒にいて気持ちのいい場所を意識的につくるようにしています」
そう話す永山は、住宅の中心にキッチンを据える設計が多い。
「建築家の先輩である浜口ミホさんがダイニングキッチンを考案したのが 1955年のこと。以来、家庭においてキッチンは銭湯の番台のような役割を果たしてきました。私が母と長く話せる時間を持てたのもキッチン。面と向かって話すのは照れ臭いけれど、隣に並べば自然に話すことができる。私も昔、食後にお皿を洗いながら母と色々な話をしました。私にとってキッチンは、誰かの城というより、みんなが使う場所という感じ。我が家では遊びに来られた方と一緒に料理することも多いです」


にぎやかな環境の中で子どもたちがのびのびと成長する自宅とは別に、現在森の中にコンパクトな拠点を計画しているという。
「東京の家には人が呼べるくらいの広さが欲しいけれど、森にいたらそんなに大きな家は必要ないし、もっと自然とのつながりを大事にしたい。ちょうど適度な、身体感覚に近い小屋という感じかな。ル・コルビュジエも南仏のカップマルタンに小さな小屋を持っていましたよね」


森のいえ
自然に包まれた小屋のような拠点

現在構想中という森の拠点。当初は平屋も考えていたが、効率性を考慮して2階建てに。以前から知る計画地にはからまつが植えられていたが、永山が子どもの頃に台風で倒木。広葉樹に自然に生え変わり、より天然の森に近くなったという。

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CG 永山祐子建築設計

新築だけでなく、リノベーション物件も多く手がける永山。群馬県の旅館「積善館山荘」などの歴史ある木造建築の改修を手がける中で、改めて木造の魅力に気付いたという。

積善館山荘
建物の歴史を読み解いて改修

群馬県の重要文化財で、元禄4年に建てられた日本最古の木造温泉宿「積善館」を、現代的な宿泊施設に改修。開放的な客室は回遊性のある平面計画とし、書院を書斎として再活用した。計画から完成まで7〜8年を要した大プロジェクト。

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Photos Nobutada Omote

「昔の木造建築は、ほぞの切り方や柱の継ぎ方を見ればどんなつくりだったかわかるので『こんなところまで!』という作業を見ると、職人さんの愛情が伝わってきてうれしくなります。木造は質感が柔らかく、触れて優しいのが魅力。ジョン・ロートナーのロサンゼルスの森の中のダイナミックな木造住宅などを見ると、実際に住んでみたいなと思います。また、可変性に優れているのも木造ならでは。ライフステージに合わせてフレキシブルに変えられるので、長く住み続けることができる。いい住宅はもっと次の世代に受け継がれるべきだと思います」

住まいと暮らしのリアリティを忘れず、柔軟な発想で住宅に取り組む永山。そこには、これからの豊かな家づくりのヒントがあふれている。

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