豊かな空間から、健やかな日常が始まる。

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豊かな空間から、健やかな日常が始まる。

SEP.29.2016

心身ともに健やかな日々を送ることができる家とは、どんな住まいだろうか。人が過ごす場所の心地よさに着目し、建築・デザインのプロ2人が対談した。

家とは、人が一日の中で長い時間を過ごす場所。その環境が、住む人の心身の健康に影響を与えるのは言うまでもない。三井ホームの家づくりは「美」「強」とともに「健」を大切にする。このテーマについて、三井ホームデザイン研究所の深沢廉さんと、建築家の東利恵さんが語り合った。

従来のLDKに縛られず、寛げる場を設計する。

深沢廉さん設計の三井ホームのオーダーメイド住宅。門の先に広い前庭を配した。

深沢 私が住宅を設計する上で大切にしているのが、家族同士のコミュニケーションです。家という場に家族が住み、生活があり、健やかに暮らすには、自然にコミュニケーションが育まれるほうがいい。そのための空間構成をいつも心がけています。

東 私は建築家の父・東孝光が設計した「塔の家」(1966年竣工)で小学1年生から育ちました。この家はドアがなく、プライバシーがないように思われるかもしれない。けれどもプライバシーは家族の暗黙のルールで守られています。別の階にいる家族の姿は見えなくても、気配が伝わる。そこからコミュニケーションが生まれ、信頼関係ができていったと思います。

深沢 たとえば子ども部屋を広くしたいとリクエストされることがありますが、それがいいとは限りません。私は、子ども部屋をあえて狭くしたり、子ども部屋が見える大きな窓を廊下につけたこともあります。子どもが部屋にこもらず、ダイニングテーブルに向かって親の横で勉強するほうが意思の疎通がしやすい。それは家族としていい状態です。

東 私はずっと何LDKという考え方に縛られたくないと思っていました。ここはリビング、ここはダイニングと決めつけなくてもいいはず。私が手がけた宿泊施設なら、「星のや 軽井沢」でまず考えたのは、寛げる空間とはなんだろうということ。そこから、ベッドルームを中心に据えた従来のホテルとはまったく違う形をつくり出せればと考えました。

深沢 リビングルームといっても、そこに家族が集ってテレビを見るのか、会話するのか、一緒になにかをつくるのか、使い方によって求められることは随分と違います。建築家は、そこまで生活に入り込んで家を考えるのが望ましい。私が設計したある住まいでは、通りの喧騒を前庭と中庭で遮り、家族の落ち着いた空間を生み出しました。静かな空間で迎える夕暮れは、心も身体も癒やしてくれる。やはりLDKから出発するのではなく、夕景が映えるような家を考えることで、健やかさを実現できたと思います。またオンとオフをうまく切り替えられるのも、家にとって大切なこと。家に着いた時、それまでと違う空気を感じる設えをよく意識します。玄関を円形にしたり、光の変化をつけたりするのです。それによって心が落ち着きます。

東 リゾートホテルは非日常の世界へと入る仕掛けが必要だと考えています。そのためには、照明も大切ですね。ホテルは間接照明を使って陰影をつけ、雰囲気を演出しています。住宅でも、私は極力、蛍光灯を使いません。室内全体をフラットに明るくしたいという方が多いかもしれませんが、陰影をつけると空間も変わってきます。

深沢 以前は蛍光灯が当たり前でしたが、三井ホームでも陰影のある照明を取り入れることが増えました。光以外にも、空間を構成する素材や色使いも住む人の気分に影響します。椅子がちょっと硬いだけで、会話が弾みにくいことだってあるんです。

東 これからは住む人の感覚の変化も意識すべきでしょうね。最近の若者が、両親とは距離があっても、シェアハウスで他人と暮らすことに抵抗がなくなってきているように、家のあり方も変わってくるかもしれない。兄弟同士の2世帯住宅や他人同志の同居住宅など、将来は家を建てる家族像のバリエーションも増えていくと思います。

深沢 時代によって暮らしの好みも変わるし、家族の形態も変わる。オーダーメイドの住宅をつくる私たちは、時代の変化を敏感に読み取り、一歩先の観点から心身ともに健やかな暮らしを提案したいと思います。

深沢廉さん設計の三井ホームのオーダーメイド住宅。

居住スペースと中庭に段差を設けず、つながりをもたせている。(写真上)

落ち着いた明かりに彩られる家は、夕景のイメージから発想したと深沢さん。建て替え前の日本家屋の記憶も継承した。(写真下)

<プロフィール>

深沢 廉(写真左)

三井ホームデザイン研究所

1956年生まれ。1979年三井ホーム入社。一級建築士として商品開発部で住宅の開発を手がけ、2004年から三井ホームデザイン研究所に勤務。エグゼクティブデザイナーを務める。

東 利恵 (写真右)

建築家

大阪府生まれ。東京大学大学院、コーネル大学大学院などで建築を学び、1986年より東

環境・建築研究所代表。代表作に「星のや」の宿泊施設ほか。住宅設計も多く手がける。

尾鷲陽介・写真 photographs by Yosuke Owashi

土田貴宏・文 text by Takahiro Tsuchida

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