静謐にして雄弁な、モノクロームの心象世界。<br>孤高の写真家 マイケル・ケンナの回顧展

CULTURE

静謐にして雄弁な、モノクロームの心象世界。
孤高の写真家 マイケル・ケンナの回顧展

DEC.26.2018

世界屈指の風景写真家として知られ、写真ファンのみならずプロの写真家をも魅了し続けているフォトグラファー、巨匠マイケル・ケンナ氏。その崇高な美意識と高いアート性、叙情を湛えた静謐(せいひつ)な作品は、ロンドンのビクトリア&アルバート美術館やサンフランシスコ近代美術館をはじめ、世界各国の著名美術館に収蔵されるほど高い評価を受けています。そんなマイケル・ケンナ氏の日本初の回顧展「マイケル・ケンナ A 45 YEAR ODYSSEY 1973-2018」がいま、東京都写真美術館で開催されています。45年に渡るキャリアの中から選りすぐられた作品の展示は、氏の作家活動の集大成にふさわしい画期的レトロスペクティブ。三井ホームプレミアムのアートワークも担うケンナ氏の、日本初の回顧展についてご紹介します。

クラシカルでロマンティックな叙情に満ちた世界。

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Wanaka Lake Tree, Study 1, Otago, New Zealand. 2013 ©MICHAEL KENNA / RAM

マイケル・ケンナ氏は、1953年、イギリス西北部ランカシャー生まれ。「London College of Printing」で写真を学んだ後、サンフランシスコに拠点を移し写真家として活動を続けます。現在はシアトル在住。「私の故郷は田舎でその幼少期の経験が土台になっている」と講演会で語られたケンナ氏の作品は、伝統的でストレートな技法や構成を用いながらも、独特のプリントテクニックにより光と大気の微妙な変化を表現しています。それは、ときに現実離れした異次元空間をも思わせ、ある物語の始まりを期待させるかのように見る人の心を揺さぶります。「見るほどに美は現れてくる。そこにあるのは外見的な美だけではないのです」。その言葉のとおり、氏の作品に対峙する時、これまでの先入観や既視感は沈黙し、その陰に潜んでいた本質的でシンプルな美が自ら立ち上がるように静かに心に迫ってくるのです。

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[左上] White Bird Flying, Paris, France. 2007
[右上] Lijiang River, Study 4, Guilin, China. 2006
[左下] Winter Seascape, Wakkanai, Hokkaido, Japan. 2004
[右下] Bassin de Latone, Versailles, France. 1997
PHOTOGRAPHS ©MICHAEL KENNA / RAM

「この自伝を成す写真は、
どれも独自のアイデンティティと物語を持っている」

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12月1日に東京都写真美術館で行われた講演会に、とてもフレンドリーな笑顔で登場されたマイケル・ケンナ氏。「私は人間の残した痕跡、創造物と自然の造形との対比を面白いと思う。同じ被写体の習作でも、撮る度にそれは変わる。物は常に変化しているのです」。移ろう自然の神秘と多様な文化への憧憬を、時には長時間露光を駆使して一葉の写真に焼き付けていくケンナ氏。今回展示される作品169点はすべて、作家自身が暗室でプリントしたオリジナルプリントです。「写真家は徘徊し、出会い、目撃する。写真とは被写体との共同作業でつくるもの。私は自分のつくる表現と深く携わっていたい」。自分の作品との繋がりを大切にするケンナ氏は、原発や廃れ行く工業地帯などの社会的なテーマにも取り組み、1988年からは約12年の歳月をかけてナチスドイツの強制収容所28ヵ所の撮影を敢行。この回顧展では、フランス政府よりシュヴァリエ章受章の契機となった「Impossible to Forget(50年後のナチス収容所)」シリーズからの25点も展示されます。また同時に、日本で10年間に渡って撮りためた野心作、被写体を人物にした新しい試み「裸婦/RAFU」も日本初公開。世界を魅了する写真家マイケル・ケンナの美しき心象世界に、ぜひ触れてみませんか。

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「マイケル・ケンナ写真展 ー A 45 YEAR ODYSSEY 1973-2018 RETROSPECTIVE」
2018.12.1(土)〜 2019.1.27(日)
東京都写真美術館 B1F展示室(東京都目黒区三田1-13-3[恵比寿ガーデンプレイス内])
開館時間:10:00−18:00(木・金は20:00まで)入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日
ただし12月24日(月・振休)、1月14日(月・祝)開館、12月25日(火)、1月15日(火)は休館

[年末年始]12月29日(土)−1月1日(火・祝)休館、1月2日(水)、3日(木)は11:00−18:00開館
12月28日(金)、1月4日(金)は10:00−18:00開館

[展覧会公式ウェブサイト]http://www.artunlimited.co.jp/mk45-year-odyssey/

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