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対談: 写真家 マイケル・ケンナ × 三井ホーム

ART

対談: 写真家 マイケル・ケンナ × 三井ホーム

MAR.28.2018

フラッグシップブランド、三井ホームプレミアムの世界観作りとアートワークを担う世界的な写真家マイケル・ケンナ氏。「自宅には、畳が敷かれた広い部屋もあり、家では靴を脱いで生活をしています。お香をたいたりもしますし、冷蔵庫にはいい日本酒が冷えていますよ」と大の日本通であるケンナ氏の語るおだやかな口調、やわらかい眼差し、作品からも感じる愛情深さ。

三井ホーム商品開発部長の天池英男との対談を通してケンナ氏の哲学とライフスタイルについてお伺いしました。

“自分にとっての自然とは、人との関係性の中にある”

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天池:以前、展覧会にお伺いしてマイケルさんの作品に触れ、レクチャーでお考えをお聞きしたことがあります。今回はこのような対談の機会をいただいてありがとうございます。

マイケルさんの作品からは、我々三井ホームも向き合っている“自然”というキーワードが浮かびますが、なんというか、その自然の景観に終始しない何か特別な存在を感じることがあります。


マイケル:ありがとうございます。そのようにお話いただき嬉しいです。わたしの作品には、過去の記憶や足跡、置き去りにしてきた曖昧な空気感のようなものが含まれていると言えるかもしれません。そこにあるのは、単なる景色ではなくて、ほかの何か。自然の大地だけを見ているのではなくて、大地と人の関係性を見ているとも言えますね。


天池:同じ場所に何度も出向き、写真を撮り続けることにもつながりますか?


マイケル:その通りです。わたしの場合、撮影をはじめた時にはそこに5分とどまるのか、一晩なのか、数日間なのか、前もってわかることはありません。その場所との対話のようなものなので、どう展開するか予測はできないのです。もしかしたら退屈かもしれない。面白くてどんどん深まるかもしれない。それは、その場にいないと分からないことです。

そして、そこにあるものも時間とともにどんどん変化していきます。ずっと同じものなく、常に変わっていくのです。

“わたしは、俳句のビジュアル版を表現したい”

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Kussharo Lake Tree, Study 1, Kotan, Hokkaido, Japan. PHOTOGRAPH ©MICHAEL KENNA / RAM


天池:なるほど。我々三井ホームの家づくりでは「経年優化」という概念を重視していて、“いま”だけでなく“その先もずっと”、家と人が対話できるアプローチを大切にしています。一度きりでない、という点にとても共感ができます。

マイケルさんは、日本にも何度も滞在され、とても深い興味をもってくださっているとお聞きしていますが、そのあたりも伺えますか?


マイケル:母国イギリスと同様にわたしを惹きつけてやまないものが日本にはたくさんあるんです。たとえば、奈良や京都で儀式的なことに惹かれた時、意味はまったく分かりませんでしたが、自分の“惹かれる”という感覚に素直に従いたいと思いました。英語に翻訳したら、それこそわけが分からないんですが(笑)。若い頃から、わたしは明示より暗示の力に興味をもっています。だからなのか、日本に来て俳句を知ったとき、“あ、自分は俳句のビジュアル版を創作しているんだ”とも気づいたんです。ほんのわずかなディテールの中に暗示されるものを感じ取る。美しい和紙に流れるように書が綴られた掛け軸も、意味は全く分からないのですが本当に美しいと実感しました。心で感じること。それはまさに作品づくりで求めているものでもあるのです。

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[左上]White Bird Flying, Paris, France. 2007

[右上]Mamta's Lotus Flower, Ban Viengkeo, Luang Prabang, Laos. 2015

[左下]Monnaie de Paris, Study 3, Paris, France. 2011

[右下]Brooklyn Bridge, Study 2, New York, New York, USA. 2006

PHOTOGRAPHS ©MICHAEL KENNA / RAM


天池:僕たちは、住宅のデザイン性の終着点として、その家に住んでくださる方にとっての居住性を常にイメージしています。芸術家のマイケルさんは創作活動の終着点として、それを鑑賞する人々を意識することはありますか?


マイケル:もちろん、作品を観てくれる人について考慮することはとても重要だと思っています。もし自分がただ風景と対峙しているだけだったら、作品を世界中の人々にシェアすることはできないでしょう。自分の作品を世の中に発信していくことも、芸術の世界に身を置くアーティストの責任だと思うのです。わたしは非常に幸運で、素晴らしい場所に行き、美しい風景をこの目で見つめ、45年もずっと写真を撮り続けるチャンスに恵まれた。完璧で非常に大切なものだからこそ、独占してはいけない。私物ではないと思っています。偶然そこに行って撮影をさせてもらいましたが、わたしが果たした役割はほんのわずかで、ほとんどはそこにあったもののおかげだと思います。


天池:最後に、わたしたちの暮らし方について何かアドバイスをいただけますか?


マイケル:わたしは、気が滅入るニュースで溢れるテレビをあまり観ません。様々な情報の中で何かと複雑になりがちな人生において、なるべくシンプルな生活を送るようにこころがけています。そして、自宅で過ごす家族との時間や自分の時間を大切にしています。

作品づくりにおいて、1回のシャッターに数時間かけるいわゆる長時間露光という手法をとることが多く、“その間、何をしているのですか?”という質問をよく受けます。そんな時、いつもわたしは“何かする必要があるのでしょうか?”と答えます。2、3時間、何もしない時を持つのはとても贅沢なことだと思います。昔は、たとえば手紙を書いて、それが相手に3日後に届き、またそれから3日後に返事が来るということに慣れていました。待つことは当たり前だった。先日、日本で電車に乗ったら、車両の乗客みんながスマートフォンに目を落とし、同じようにずっと何かをしている姿を見て驚きました。現代は、ITが生み出したディバイスから溢れる情報に知らず知らずのうちに支配されているような気がします。じっくりと自分自身の心が求めるものとの対話に時間をとるように意識してみてはいかがでしょうか?そこには人間にとって、もっと大切な情報がいっぱい隠れ潜んでいると思うんです。


天池:同感です。何かに縛られることのない時間こそとても贅沢ですね。我々三井ホームも家づくりにおいてそんな贅沢な時間の流れる上質な家づくり、そして暮らしづくりを目指しています。お話を伺えてとても共感できました。

ありがとうございました。

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